「おまえさん、ほんとに今日、店開けんのかい? この間も、あたしゃ言っただろ? 日曜に急に開けたって、誰も来やしないって」
「バカヤロー、つべこべぬかしてっと、ぶん殴るぞ。店ってななー、開けとくことが、でーじなんだ」
「そんなこと言ったってさ、この間も散々だったじゃないか。店開けんのFacebookに投稿してさ、👍️は結構あったけども、結果はどうだったい? 思い出してごらんよ」
「、、、、、、」
「しかもおまえさん、👍️に惑わされて『こりゃ、今日は満席だな。前祝いだ』って、昼に鰻重、しかも上、頼んじまってさ。そのツケまだ払ってないじゃないか」
「、、、、、、」
「そういうのを何てっか知ってっかい? 捕らぬ狸の皮算用、ってんだよ」
「うるせー、うるせー、さっきから黙って聞いてりゃ、、、いちいち亭主のやることに難癖つけんじゃねーや」
「何も難癖つけてんじゃないよ。聞き分けのない人だねー」
「うるせー、うるせー。テメーがそんなだからな、回りから言われんだよ。あそこん夫婦は、狐と狸の化かし合い、ってな」
「そうそう、おまえさん、狐で思い出したんだけどね、あの辻んとこに、うどん屋の屋台あるだろ?」
「あー、あの落語の『うどんや』みてーに、何かってーと、うどん食わせよーとしやがるとこか」
「うどん屋だから当たり前じゃないか。そこがね、ここんとこ、外国からのお客が多くなったもんだから、英語のお品書き作ったんだよ」
「あのヤローに、そんな学があるたー思えねーがな」
「まあまあ、最後までお聞きよ。そいでね、『きつねうどん』を『フォックス ヌードル』としちまったんだよ。で、それが外国で話題になっちまって、向こうの瓦版にゃ『日出づる国では、狐を食す』と書かれる始末さ。しかも、現地の動物愛護団体とかいうヤツらが、ピースボートとかいう黒船に乗って、浦賀沖までやってきてんだとさ。こりゃ、幕府もまずいってんでね、なんでも生類憐れみの令とかの掟つくって、うどん屋しょっぴくみたいなんだよ」
「そりゃ、キツいね(狐)」