先週に続き、シネマヴェーラ渋谷で開催中のソビエト映画特集へ。本日は『持参金のない娘』(84) を観賞です。
1800年代後半ぐらいかな? ロシア、これがボルガ川かー。家柄良しの娘とはいえ、御家はすでに斜陽もいいとこ、立派に嫁がせたいとは思っても、持参金がない。美しさゆえに言い寄る男は多々あれど、なんだかねー。好きな男出来たけど破局とかいろいろあって。
最後は愛を求めて、ズッーと言い寄ってた格下男性と婚約するんですが、これが俗物もいいとこ。すったもんだのあげく、「もうお金しか信じない」、バーン! あ~あ。今際の言葉「これで良かったのよ」。
しめて二時間半。美しい風景、音楽、衣装、装飾の数々。もう満腹もいいとこです。そして、主演女優。いや、これを第一に挙げなきゃいけない。こんなに美しい女性を見たのはいつ以来だろう? いや、初めてかもしれません(皆さま、申し訳ございません)。
機会ありましたら、是非ご覧いただきたい。
それにしても持参金です。この19世紀辺りの、お国は違えどフランス文学を読んでますと、よく出てきますね、持参金。
現代のお見合いパーティーなんかでは、男性の年収がいくらかということが重視されるようですが、一昔前はね、身分に関わらず、女性は金なかったらマトモな結婚は出来なかったんですよね。
娘に十分な持参金を持たせてやることが親の務め。
言い方を変えれば、莫大な持参金さえあれば、プチブルジョアの娘でも貴族の男性と結婚が出来る。
革命期の動乱の中で、商人が台頭する一方、見掛けとは裏腹に火の車という貴族は多かったでしょうからね。やつら金遣い荒いし、労働は罪だし。
だからといって、娘が幸せになるとは限らない。サロンに行っても、周りからは見下され、芸術の一つでも解せばまだしも、そんな素養は持ち合わせず。
旦那は旦那で浮気、本人も野心溢れる若者に半ば利用されてるとも知らずのめり込み、、、
特にバルザックの『ゴリオ爺さん』は、ここらのネタの宝庫。毎日毎日汗水垂らして働いて、可愛い娘たちに莫大な持参金を持たせて。しかし、当の娘たちは、色にまみれた金食い虫に。貧民窟に押しやられたゴリオ爺さんの断末魔の叫びを聴け。ほんと恐ろしい。
地獄の沙汰も金次第。ほんと世は金カネ。金が金を生む商売。金のためなら何でもかでもやっちまう。
本来、相互扶助の精神で始められた生命保険も、家買うためにローン組むなら保険に入れと、人命を金に換算してしまう。
キャプラ監督の『素晴らしき哉、人生!』(54) で、主演のジェームス・スチュワートが人生に絶望して保険証書を手に、橋の欄干から身を乗り出そうとするシーンは切ないね(ラストは涙必死の感動巨編)。
そうとは分かりつつも、生きていかなきゃ
いけねぇ。最低限の金は必要だ。
時短要請の協力金申請しなきゃ。それがなきゃ、飯が食えねー。
あ~あ、欲にまみれた金を憎みつつも、その金に蹂躙されるとは。
持参金のない娘、、、
もとい、自尊心のない男、、、
(前回投稿の二作品の公開年は逆でした)