店主は気まま、客は我がまま。そんな気楽な銀座のBAR。でも、それでいいんじゃないの?

篠田正浩監督特集『無頼漢』

先週の『夜叉ヶ池』に続いて、渋谷ユーロスペースで開催されています篠田正浩監督特集、生誕90年祭に出掛けまして、本日は『無頼漢』(70) を観賞。
善きにつけ悪しきにつけ、これまでの伸び伸びとした風俗を真向から否定する天保の改革の頃。お上への反発を中心に、江戸の人々、特に数人の無頼漢の生きざまを描きます。

振り返れば『夜叉ヶ池』(79) の玉三郎の気持ち悪さ(繰り返しますが、ファンの方申し訳ありません)。今日こそは岩下志麻の美しさに酔いしれようと、今一度、今特集に馳せ参じたわけですが、主演、仲代達矢、、、

今は無き銀座のバー、そのマスター、ちょっと安部公房に似た。たまにお邪魔して、映画とジャズとB級グルメで話が盛り上がった、そのマスター、何が厭かって、そう仲代達矢、あの潤んだ眼の演技が気持ち悪いって。
三年前にユーロスペースの一つ上階のシネマヴェーラで、それこそ安部公房原作の『他人の顔』(64) 観たときに、改めてその顔見てみて、、、確かに。でも、内容が狂気だから、それほどの違和感はなく(いや、個体で見ると違和感あるんだけど、狂気の中の狂気だからってことで)。

そして、今回も潤んだ目、全開。玉三郎並みの気持ち悪さ(度々ファンの方申し訳ありません)。
でもね、お目当ての岩下志麻の美しさ。そして、期せずしての丹波哲郎の怪演(河内山宗俊役。以前早稲田松竹で観た、河原崎長十郎がやった山中貞雄監督の『河内山宗俊』(36) も良かった)。それに何より映画自体の素晴らしさ、潤んだ眼も許してやろう。

冒頭の出演者の紹介場面、朱に彩られた障子戸をバックに、何とジャズ。テナーに代わって三味線登場、なんと斬新な。
すぐの仲代達矢はおいといて、岩下志麻の花魁姿、丹波哲郎の立ち回り、最後の最後は、お上が禁じた江戸の夜空を彩る華火
がドーン、ドーンと。そしてそして、滅びの美学、、、

館内、爺さんばっかり。若い人よ、こういうの観ようよ。こういうので感動しようよ。折角の休みなんだろ(僕は毎日休みですが)。