これまで、フランスを中心にヨーロッパ及び昔のハリウッドばかり観てきまして、たまに昔の日本映画を観るといった感じだったのですが、今年に入り、昔の日本映画を観ることも多く、ここに来て、さらにさらに昔の日本映画を観なければならない、といった感が強まって参りました。
本日も渋谷のユーロスペースへ、篠田正浩監督特集へ出掛けまして、『心中天網島』(69) を観賞です。原作は近松門左衛門の人形浄瑠璃。昔の日本文学読んでますと、心中モノの例として、よく出てきますね、大阪の紙屋治兵衛と遊女小春のこのネタ。
しかし、人形浄瑠璃も歌舞伎も未経験者なので、詳しいストーリーは今回初めて知りまして。
映画なのに、ちゃんと自ら動ける役者なのに、わざと黒子を登場させ、大仰なセリフ回しといい、浄瑠璃と歌舞伎をミックスしたような演出。治兵衛役の吉右衛門は十八番でしょうが、岩下志麻、なんて素晴らしいんでしょう。治兵衛の妻おさんとの二役ですが、おさんの眉なし、お歯黒の圧巻の演技に鳥肌が。
セット、美術も素晴らしく、死に行く二人が最後に巡る道々はロケですが、霞がかった白黒の場面場面がこの世のモノとは思えず。
墓場での死の直前の最後の契り。吉右衛門、ふざけんなよ、俺の志麻から手を離せ。
さておき、ほんともっと色々知らなきゃいけないね、日本の文化、芸術を。
とはいえ、谷崎潤一郎の『蓼食う虫』だったかな、若い頃女遊びにいそしんだ道楽者は、年取ってからは骨董と共に文楽に凝るそうですが。とすると、僕には少々かじる程度が適切なのかもしれませぬ。