店主は気まま、客は我がまま。そんな気楽な銀座のBAR。でも、それでいいんじゃないの?

『オリーブの林をぬけて』と『イヴの総て』

本日は久しぶりのハシゴです。

まずはユーロスペースで開催されていますキアロスタミ監督特集に先週に続き出掛けまして、『オリーブの林をぬけて』(97) を観賞です。
これは素晴らしい。映画好きには堪らない。秋も深まる雨模様の中、心がジーンと温まりました。

結婚したいのに無視されっぱないの青年と、その相手の少女の物語。
映画の中に映画の撮影風景が組み込まれ、その二人が素人俳優かつ夫婦役として撮影は進み(遅々として)、最後は映画を飛び出し、オリーブの林をぬけて、広い広い草原の舞台に渦巻く想いが解き放たれ、、、

よく映画でストーリーをアーダコーダ言う人いるけど、ストーリーを重んじるなら小説に敵うものはないわけですよ。
映画とは何か? もちろん映像ですよね。切り取られた監督の視点を通じての視覚的解釈。
撮影の合間をぬって、青年は少女に語りかけるわけですよ。OKなら、その読んでるページをめくってくれと。カメラは少女の手をクローズアップ。おっ、ページがうご、、、ハーイ、本番と、撮影クルーから声がかかり、手元はピタッと止まり、うやむや。

これこそ、映画ですよ。百聞は一見にしかずなんて諺もあるけど、この絶妙な微妙さ加減はいかなる文章の名手であろうとも、文字では表現し尽くせないわけですよ。
改めて、映画ってのは良いもんですねー。

と、終了後、階段で一階上のシネマヴェーラ渋谷に移動。オリーブといえばマティーニ。そのマティーニを、かつベリードライなマティーニを豪快に飲み干すベティ・デイヴィス主演の昔のハリウッドの傑作、マンキウィッツ監督の『イヴの総て』(50) を観賞です。

先週から同館で始まってました、ガルボ、デートリッヒ、バーグマン、モンローの四大女優特集のうちの一本です。
これは昔から観たい映画の一本で漸く。モンロー出演のため、今特集に加えられたのですが、申し訳ないけど、モンローどうでもいいね、もうベティ・デイヴィスの圧巻の演技につきますね。
アン・バクスターに注目するなら、この間の『恐ろしい映画』特集に入れてもよかったね。

キアロスタミの世界観とは全くベクトルを異にするハリウッドらしい、いかにもアメリカらしい価値観。反吐が出そうな内容ですが、ほんと観れて良かった。140分弱があっという間でした。
それにしても、こんなにマティーニが似合う女性はそうそういませんな。