店主は気まま、客は我がまま。そんな気楽な銀座のBAR。でも、それでいいんじゃないの?

田中絹代の監督特集

そして、新春第二段は例年通り早稲田松竹で昔の日本映画。
昨年は小津特集、一昨年は溝口特集でしたが、今回はその溝口特集全てで主演だった田中絹代の監督作(4Kレストア)特集です。
女性監督のハシリではなかろうか、世界的にみても。

全六作品のうち、本日は日活の『乳房よ永遠なれ』(55) と『月は上りぬ』(54) を観賞。
正月早々、乳房かよー。と、なになにー、乳癌で若くして亡くなった女流歌人の物語? どうもこの手のものはねー。
と、これがですね、素晴らしい、ビックリ。
有馬稲子の熱演というよりも、それを見つめる田中絹代の視線が、女性ならではの視線が、兎に角、優しく温かく物悲しいのです。

乳房を失ったあとの余命幾ばくもない中での、歌人としての、それ以上に女性としての“再起“に胸がジーンと熱くならずにはいられない、そんな素晴らしい作品でした。
今際に母親に、髪を洗って欲しいと、、、武骨な男どもよ、そんな心情を思い付きもしないブ男どもよ、、、ゴメン。

もう一本の『月は上りぬ』。脚本に小津が加わってて、小津作品常連の笠智衆とか佐野周二がでてる訳だからではないですが、なんとなく小津っぽいテイスト。でも、そこに溝口の美学も入り込んできて、更にその二つを足して、いや掛けて、さらにさらに何条もして、兎に角美しい作品でした。

月の恋への魔力は、古今東西いく例もあれど、恋人たちと共に照らし出される日本の美しき風景よ。あー、日本映画のなんと素晴らしいことよ。

(早稲田松竹は先月で70周年。めでたし)