店主は気まま、客は我がまま。そんな気楽な銀座のBAR。でも、それでいいんじゃないの?

フレンチノワール『殺られる』

昨日から新宿はK’sシネマで始まりました「奇想天外映画祭2022」。去年の同映画祭は緊急事態宣言による無職と云うこともあり、多くの作品を観れたわけですが、今回は無理だなー。とりあえず、三、四本はいけるかなー。
と、本日はフランスのノワールもの、『殺られる』(59) を観賞です。

これは昔から観たかったんですよね。何故なら、バックミュージックをジャズ・メッセンジャーズが担当してるから。
台風の影響による大雨も、靴から何からずぶ濡れも、地下鉄止まっても、そんなことは関係ありません。いざ、出掛けよう。

へっ? なんとまー、つまんねー、あーあ。B級どころか、C級、いや、これ以上はないZ級ノワールと命名しても、誰からも叱られないと思うんですが。
ベニー・ゴルソンのサックスがきて、ブレイキーのナイアガラロールが盛り上げて、コジャレたボビー・ティモンズのピアノがあって、ジミー・メリットのベースがさらに拍車をかけ、そして、リー・モーガンのミュートでの甘いトランペットに唇は重ねられ、、、それなのに、それなのに、つまんねー。
かくなる上はジャズ・メッセンジャーズのパリはサンジェルマン・デ・プレでのライブ版を聴くしかないね。口直しに。

この頃のパリは本当にジャズが盛んだったらしい(その頃の熱気を伝えるスタジオボイスをご覧ください)。
この作品以上によく知られている、マイルスが音楽を務めた、ルイ・マルの『死刑台のエレベーター』をはじめ、ジャズは映画音楽にも使われるし、実際、本場アメリカからジャズミュージシャンが続々と訪れ、パリに居を構えるものも。

その先陣が天才ピアニスト、バド・パウエルですね。58年頃かな(パリのカフェでの彼をご覧ください)。
しかし、精神疾患を患っていた上に、ライブハウスで、客の酒を勝手に飲むことシバシバ。問題児でもあったらしい。五年ぐらいして帰国。
でも、その間、パリで残したレコードがいくつかありまして。

その一つ、ポートレート・セロニアスってライブ版。傲慢な彼が唯一尊敬していたセロニアス・モンクの曲を中心にした実況録音なんですが、もうね、ヨレヨレなんですよ。パウエルと云うよりヨレエルって感じで。
でもですね、スタンダード曲『あなた無しでは』のガンガンに攻めまくるブロックコード。ヨレヨレなのに一生懸命なブロックコードを聴いていますとですね、なんか目頭が熱くなってくるんです。

あー、やっぱり好きなミュージシャンって、ジャズって、どんなに不調でヨレヨレでも、魂に訴えてくる限り、それは下手とか上手いとか、そんな二元論は超越しちゃって、唯一無二、絶対的な感動を与えてくれるんですよね。

あーあ、映画も好きなんだけどなー。なんで、これはZ級と感じてしまうんだろー。