店主は気まま、客は我がまま。そんな気楽な銀座のBAR。でも、それでいいんじゃないの?

【2022映画総括】

【2022映画総括】

年末まで仕事なんで、今年の映画観賞はこの間の日曜で終わり。
ということで、今年のトップ3を。

第一位『奇跡』(54、デンマーク、1.16、シアターイメージフォーラム)
同『裁かるゝジャンヌ』(28、フランス、1.1、シアターイメージフォーラム)

今年は緊急事態宣言の休業要請もなく、普通に働いていたため、昨年の半分ほどの70本を劇場で観賞。
そして、今年は兎に角この人を挙げなければならない、カール・Th・ドライヤー監督。
昔から観たかった『裁かるゝジャンヌ』。なかなか機会なく。
ところが、幸運てのは一時にドバーと訪れるものですな(そして使い果たす)。昨年の夏から秋にかけてのシネマヴェーラ渋谷での「恐ろしい映画特集」やら「サイレント映画特集」やらで立て続けに観ることが出来まして。
『吸血鬼』(32)
『怒りの日』(43)
『ミカエル』(24)
『あるじ』(25)
このどれもが素晴らしく。

そして、なんと、年末年始にかけて、シアターイメージフォーラムでドライヤー特集をなるとな。しかも、ジャンヌがあるじゃないですか。
うち、年末に『ゲアトルーズ』(64) をこなしまして(『怒りの日』は上述)、元旦そうそうに行って参りました。
立てねー、椅子から立ち上がれねー。それほどの感動。
さらに、、、二週間後の『奇跡』。
止まらねー、涙がとまらねー。我が国の技術を集結させ、どんなに強固なダムを造ろうと、この奔流は止められねー。

第二位『懺悔』(84、ジョージア、2.13、岩波ホール)

仮にドライヤーなかったならば確実に一位。それほどの素晴らしい作品。
全ての道は教会へ続く、、、ドストエフスキーのような息もつかせぬゴタゴタのドロドロを経て、あー、本当に素敵なラストシーンでした。

第三位『マルケータ・ラザロヴァー』(67、チェコ、7.10、シアターイメージフォーラム)

中世の当時の衣装、家屋など美術も素晴らしく、イヤー良かった(語彙が少なくすみませぬ)。
昔の人って皮膚感覚で生きてるような。触れ得ないものは全て神の領域に。
畏れおののくことのなんと神聖なことよ。知らないことも知ってるかの如く、したり顔の現代人よ、、、

と、やはりもう少し挙げておきたい、番外編を。

『かあちゃん』(61、日本、8.21、神保シアター)

戦後間もない、三間長屋を主な舞台に、そこで暮らす貧乏、いやもっとだな、極貧家族の物語。
今年も昔の日本映画ちょこちょこ観まして、正月の早稲田松竹での田中絹代監督特集なんか素晴らしかったけど(特に『月は上りぬ』なんかね)、夏に観たこれは挙げておきたい。
皆が皆貧しい時代、貧しさが題材なのに、こんなに笑えてスカッとする映画ってありますかね。
劇中、デ・シーカの『自転車泥棒』にオマージュを捧げているであろうシーンもありますが、当時のイタリア映画のネアリズモねー。どうなんだろ。やっぱ昔の日本映画、最高ですね。

『戦争と母性』(33、アメリカ、7.24、シネマヴェーラ渋谷)
『男の敵』(35、アメリカ、9.11、同館)

ということで、ジョン・フォードです。
この丁寧な造り。オールドファッション。良い意味でね。染み入るようです。

『冬の旅』(85、フランス、11.6、シアターイメージフォーラム)

観終わった後、ずっーと引っ掛かっている。クリストを連想してしまった。
何でもかでも、兎に角「自由」って掲げとけば人類の勝利みたいな世の中で、自由であることの本当の姿を垣間見さえてくれた一本。
『五時から七時までのクレオ』とか『幸福』とか、ポップでお洒落なようでいて、ヴァルダが本当に示したいのは、人生の残酷さなのかもしれない。

と、トップ3と云いながらダラダラと。
改めてここで挙げた作品達を振り返ってみますと、イヤー、女性ってのはほんと強いね。畏れ入るね。

皆さま、良いお年をお迎えください。
来年もよろしくね。