カウンター越しにカクテル・ギムレットを注文して、したり顔でヒトクサリやるオッサンが。
「ほんとのギムレットを知らないんだね、、、ほんとのギムレットは、、、マティーニなんかとてもかなわない」とか、
「ギムレットには早すぎるね」とか、
「開けたてのバーが好きなんだ、、、」とかね。
レイモンド・チャンドラー著、探偵フィリップ・マーロウが活躍する小説『長いお別れ(ロング・グッドバイ)』の中の主要人物テリー・レノックスの台詞なのですが、カクテルの世界において、あまりにも有名な独り歩きのヒトクサリとなっており。
このため、見習いバーテンダーにとって、学ぶとこは多々あれど、この小説の読破も大事な修行の“一巻“と成っているのです。
僕も昔読んだのですが、なんかつまんなねー。まあ、一冊で云々もなんですから、チャンドラーのマーロウもの、ついでに五冊ほど読んだのですが、なんだかなー。
と、前置きが長くなりました。
先週に続きまして、角川シネマ有楽町で開催されています、ロバート・アルトマン傑作選三作品の上映に出掛けまして、本日はそのチャンドラー原作の『ロング・グッドバイ』(73) を観賞です。
良い。
原作はつまんないけど、ギムレットのギの字も出てこないけど、これは本当に良い。
だいたいこの手のハードボイルドものって、バックミュージックはジャズなんですが、ジャズの醍醐味の一つに即興性がありますよね。
ありきたりの曲を題材として借りてきて、それを即興的に再構築していくカッコよさ。
そう、この映画も題材をチャンドラーの小説から借りてはいるものの、アルトマンが再構築したマーロウ像が、素晴らしい映像で綴られているのです。
猫好きでユーモアに溢れ、しかし全体を貫くクールさ。
そして、最後の最後に彼は唯一のヒキガネを弾くのです。
ハリウッドに対し、ひいてはアメリカ全体に対し、いや、我が国日本にも、もっとだな、全世界の金のみが全てという価値観に対して。
マーロウよ、タバコ吸いすぎだぜ。