『チェス狂』
バックミュージックもない完全なサイレントです。
実際のプロによるチェストーナメント選手権のシーンを交えながらの、チェスにとりつかれた男と、それに呆れ果てる婚約者のドタバタコメディ。
小道具の扱いから何から何まで上手い、ホッコリ。
チェス狂ったら、ナボコフの小説『ルージン・ディフェンス』を思い出しますよね。
と、チラシの短い解説を見たら、なんと、「チェス好きなナボコフもカメオ出演している!」とあるではないですか。
すでに七作品ほど読み、ナボコフファンになりつつある身としましてはですね、動くナボコフを一度は見とかんことにはですね(でも、すぐ分かるだろうか。なんせ、新潮文庫のあの多分晩年の二重顎のちっちゃい写真しか見たことがないんだから)。
じーっ、じーっ。
分かりませんでした、、、
そもそも、ナボコフってロシア革命のとき亡命してんだから、ソビエト映画に出れるわけがないよね。もしくは、このチラシのナボコフは別のナボコフのことなんだろか、それとも、やはり僕が見つけられなかっただけなんだろか。
『カメラを持った男(これがロシアだ)』
そんなナボコフ問題にモヤモヤしてたのもつかの間、この冒頭の映画館らしき場面からスクリーンを飛び出したカメラが、街中を飛びまくり、あらゆる場面を切り取っていく。もうね目がクギ付けです。
一瞬も止むことなき動き。
人も動物も機械もあれもこれも。
今日は映画の前に、恵比寿の都写真美術館でドアノーの作品に触れてきたのですが、写真の静に対して映画は動、この当たり前のことが、これほどまでに改めて納得させられるってのはね。
しかも、当時の最先端なのでしょうか、映像処理技術がこれでもかと。
イヤー凄いわ。なんのストーリーもありませんが、日頃見慣れた光景がなんか可能性を秘めまくってて、そら恐ろしいぐらいに感じられまして。
やはり、ソビエト映画は素晴らしい。