本日もまた、シネマヴェーラで開催されています「サイレント期の巨匠たち」と題する特集に出掛けまして、パウル・レニ監督の、劇場を舞台にしたドタバタ劇『最後の警告』(28) を観賞です。
ストーリーはつまんねー。最後に殺人犯が明かされ、晴れて愛するものどうしのキスシーン。
ところがですね、サイレントだから字幕だけのシーン、この文字がですね、動くんですよ。そんときの状況にあわせて、ゆらゆら、しゃしゃ、っとね。
冒頭、劇場が所在するブロードウェイを象徴するショットのカオス。そのカオスを掻い潜るように現れる舞台、大劇場の格好よさ。
そして、カメラは舞台裏に回り、小間物やら装置やらの数々が生き生きとして。
あー、なんて格好いいだろう。そして、繰り返しますが、あー、なんてつまんない結末だろう。
こんなのを平然と作れるのは、よっぽどの天才だと思うのです。
以前、今特集でもありますが、同監督の『笑ふ男』を観たときに、細部の素晴らしさの一方、あまりにもハリウッド的な、大衆好みの結末に接し、なんかイマイチ、モヤーとしたもんがなきにしもあらずだったんですが、比較するのも失礼なほどの今回の荒唐無稽さは、逆に僕の心を諦めにも似た、一種の清々しさで満たしたのでありました。