戦争と云う歴史の波に翻弄された女性を、女性の目線から、慎ましく、ときに激しく、そして何処までも美しく描き。
昨日から神保町シアターで始まりました田中絹代特集。出演作はもちろん監督作を一挙公開と云うありがたさ。うち、本日は監督第四作にあたる昭和35年の大映作品『流転の王妃』(60) を観賞です。
これは本当に素晴らしい。
もうね、観入ってしまい肩が凝りまくり。
彼女の監督作はこれまで二本観てるのですが、美の極致をまざまざと見せ付けられた感じ。
初めて観た二作目の監督作『月は上りぬ』では小津の脚本、そして、自ら溝口作品に多々出ていたこともあり、小津と溝口の相乗効果のような優しく幻想的な作りが印象的で(朧月の美しさよ)。
三作目『乳房よ永遠なれ』では、死の間際の月岡夢路が母親に「髪を洗って欲しいの」と頼むシーン。野郎共よ、こんな女ごころが理解できるかい。
そして、繰り返しになりますが、本作の圧倒的な美しさ。
主演京マチ子の台詞に「政治のことはよく分からないけれど」ってあるけど、あまりいろんな深読みはせずに、その映画的美しさに、ただただ身を委ねるべきでありましょう。