不条理な戦争と云うものを経ての、赦しと再生の物語。
引き続き神保町シアターで開催されています田中絹代特集。本日は彼女の監督作第一段、昭和28年東宝作品『恋文』(53) を観賞です。
想い続けた女性を、今まさに発車せんとする電車内に見出だし、声を限りに呼び掛ける。
想いもかけない出会いに、感慨に浸る間もなく電車を飛び降りる女性。
プラットホームで見つめあう二人を車外のフレームに捉えながら電車は動き出す。
果たして、現在の二人はフレームアウト。代わりに、幼き日の二人の戯れがフレームイン。
うまいなー、映画だなー。
過去の困難な日々を涙ながらに告白する彼女。行き交う車のヘッドライトが間歇なく照らす様は、取調室を連想させ、ラストの病室での、柔らかな光に包まれた“目覚め“のシーンは、何ら解説を要しない“再生“そのものであり(ドライヤーの『奇跡』を思い出してしまった)。
繰り返すけど、うまいなー、映画だなー。
田中絹代自身、『西鶴一代女』の如き貫禄極まりないちょい役に加え、あちこちに名優が次々登場。
彼女の監督第一作を、皆で祝福したのでありました。