店主は気まま、客は我がまま。そんな気楽な銀座のBAR。でも、それでいいんじゃないの?

中川信夫特集

国立映画アーカイブで始まりました、生誕120年、中川信夫監督特集に出かけまして、本日は昭和26年の新東宝作品『さすらいの旅路』(51)を観賞です。

昭和のロマン歌謡にのせたベタな人情劇、かつ、古びた映画館前で待ち合わせる男女のあれこれは、まさしくカウリスマキの『枯れ葉』であり、いや、こっちが古いんだから、中川信夫こそカウリスマキの師匠であり。

中川作品は過去に『かあちゃん』しか観たことがなかったのですが、これは傑作、かつ、デ・シーカ『自転車泥棒』へのオマージュも微笑ましく、こーやって古今東西、作品が次から次へと繋がっていく楽しさよ。

三件長屋から、それと同じく壁薄き安アパートへとセットは変わっても、そこはかとなき人情は永遠の日本の美しさであり、中川が切り撮るあらゆるショットに、それはそこはかとなく、朧に映し出されるのである。