店主は気まま、客は我がまま。そんな気楽な銀座のBAR。でも、それでいいんじゃないの?

『ヨーロッパ一九五一年』

先週から東京国際映画祭が始まってますな。
いつものニューヨークのオジサンをはじめ各国からの映画関係者が、連日当店を訪れてくれてるんですが。

「今度の日曜は何を観るんだい?(オジサンは僕が映画祭に興味がなく、毎週日曜、どっかの映画館に行くことを知っている)」
「イングリッド・バーグマン特集やってるから、それに行こうと思ってるよ。ロッセリーニのやつね」
「おー、それは素晴らしい。『ストロンボリ』は最高だ(僕は英語が苦手なので、以上の会話は何となくです)」
と、オジサンと一緒に来てた各国の人達も『ストロンボリ』最高、の大合唱となってしまい、、、

久しぶりに前置きが長くなりましたが、本日はシネマヴェーラ渋谷で開催されていますイングリッド・バーグマン特集に出かけまして、ロベルト・ロッセリーニ監督作『ヨーロッパ一九五一年』(52) を観賞です(『ストロンボリ』は日曜上映なし)。バーグマン、ロッセリーニともに、それぞれいくつか観てるんですが、共同作品は初めて。

ネオレアリズモなのである。

そして、その下層階級の貧困を見つめるのは、黒髪中背のイタリア女から抜きん出た、巨大なブルジョア金髪のバーグマンなのである。

愛に基づく善行も、愛を知らぬ人から見れば奇行となる。一昔前であれば、磔刑、火刑に処されるべきところ、真の愛に目覚めたバーグマンに揺るぎはない。

どんな絶望の淵にあろうとも、劇中何度も繰り返される、人は生きてゆかねばならない。

愛に触れたバーグマンの笑顔、それが理解されない悲しみ、苦悶、しかし、妥協することなき怒りに似た毅然さ。
そんな愛に基づく人生の喜怒哀楽、そのバーグマンの表情全てを切り取っていくロッセリーニ。

『ストロンボリ』もいつかは観なければ。