店主は気まま、客は我がまま。そんな気楽な銀座のBAR。でも、それでいいんじゃないの?

清水宏監督特集『もぐら横丁』

昨日からシネマヴェーラ渋谷で始まりました、清水宏監督特集に出かけまして、本日は昭和28年の新東宝作品『もぐら横丁』(53) を観賞です。

佐野周二扮する新進‘’貧乏‘’作家の芥川賞受賞の報せは、巷に知られたような銀座のバーでもクラブでも、はたまた貸し切ったレストランでも自宅でもなく、赤ん坊の急病に駆けつけた、緊迫の病院の一室に届けられる。

と、悲痛な表情が、徐々に微かにゆるんていき。

それでも、貧乏変わりなし。
受賞記念の懐中時計も、勝手知ったる質屋の草となり。

貧乏、すなわち悲劇、の西洋とは違い、日本はそこに笑いと愛と幸せを導く。

小津作品では、佐野の背中に田中絹代の細き指先が絡まり、成瀬作品では、佐野と原節子が紙風船を打ち合い。

そして、この清水作品では、雑踏の中、佐野が一旦はぐれた島崎雪子を、赤ん坊を背負った彼女を、きつくきつく抱きしめるのである。