主人公の名はマルティン。
マルティン、マルティーニ、マティーニ、、、
そう、このマティーニってカクテルがなかなか曲者なんですよね。
あのホッソリした足に、逆円錐のすっきりシャープなグラスは一般にカクテルグラスと云われてますが、別名マティーニグラスと呼ばれるぐらい、マティーニと共に形作られてきた歴史があり、カクテルと云えばマティーニ、マティーニと云えばキングオブカクテルと称させるほどなのです。
40~50年代辺りのハリウッド映画でも、酒場だろうが、家庭だろうが、職場だろうが、戦場だろうが、兎に角、パーティでも二日酔いの朝でもアチコチ出てきますし、そんなにバーに通わない人でも、その名前ぐらいは知ってらっしゃるでしょう。
しかしですね、よくよく考えてみますと、オリーブを入れるの入れないの、レモンピールをやるのやらないの、ジンはどれにするの、ベルモットはと、それはそれは何かと喧しい一方、実際に飲んで、本当に美味しいって感じる人、どのぐらいいんのかなー。
なんせ味は平坦だし、アルコールの持つ力強さ、甘みを旨いと感じられる人にのみ許されるカクテルですからね。
大衆的なもののようでありながら、決して大衆を受け付けない。
まさしくナボコフではありませんか。
『ロリータ』がどれ程ベストセラーとなろうと、彼が造り出す世界は大衆なるものを拒絶する。
それにしても、今作品も、時空を自由にサマヨイ、ほんと細部の表現のなんと素敵で豊かなことか。
ストッキングがまるで生き物のようじゃありませんか。
女の子があわてて着替えて出ていった部屋、、、白粉が銃撃の後のように煙ってて、ストッキングは一発で仕留められて横たわって、洋服ダンスからは衣類が臓物のように飛び出てて、、、
(どうでもいいことですが、「ウイスキーとソーダ」って部分は、「と」をとってウイスキーソーダって訳した方がいいような。多分原文はウイスキーアンドソーダだと思うけど、ウイスキーのソーダ割り(我が国で一般にハイボールと呼ばれてるやつ)って、一個の飲み物のことだから)
