店主は気まま、客は我がまま。そんな気楽な銀座のBAR。でも、それでいいんじゃないの?

勅使河原宏特集『燃えつきた地図』

引き続きシネマヴェーラ渋谷で、勅使河原宏監督特集。本日も安部公房の原作・脚本による『燃えつきた地図』(68) を鑑賞です。
主人公の探偵に勝新太郎、失踪した夫の調査依頼人に市原悦子。僕の中で探偵は仲谷昇のイメージ。原作に基づけば。勝新はどうもアクが強すぎるような。

調査すればするほど、何がなんだか分からなくなってしまう。本来の目的がなんだったのか、調査してるはずの自分が失踪人のような。こんなストーリー。

観ているうちに、僕のイメージを良い意味で覆し、アクが出汁の表面を覆う如く勝新色に染まって、グイグイ引っ張って行く感じ(白ブリーフ姿はアノ事件を思い出させたけど)。もちろん、監督の映像センス、それに絡まる音楽、そしてもちろん、あの長い原作をギュッとまとめた安部公房よ。
本当に本当に素晴らしかった。

映画では、ほんのちょっとのシーンだが、電話ボックスの中の新聞紙からはみ出た大便。これに全てが集約される。
この広い、多くの人で溢れる大東京。何故、周りに助けを求めることなく、此処に便をしなければならなかったのか。
大都会での孤独、大都会からの疎外、ああ東京砂漠。

(劇中、依頼人の本棚にさりげなく『燃えつきた地図』の本があったのは御愛嬌?)